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  • 2013.12.20 Friday
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我が、蹉跌のオーディオファイル #15.波動スピーカー


                                         波動スピーカー

日本で最初に出来た鉄筋コンクリート造りのアパートは同潤会アパートであり、原宿にもその古色蒼然たる素敵な佇まいを見る事が出来た。

同潤会改装後

崩れかけたアパートだったが趣があり、何時頃からだったろうか、若い人たちがファッションや小物など扱う沢山の洒落た店が出来ていてなかなかなの風情を醸し出していた。

同潤会改装後

だがこれも老朽化には勝てず、数年前つまらぬビルに生まれ変わったが、これでは
なんだか建て替えのために追い出された若者達が可哀相に思えてならない。
それでも一度は見てみようと野次馬根性で見物に行った折りである、中ほどの階段を降り切ったところに何やら店があったので入ってみると雑貨店だった。
色々なものがごちゃごちゃと置いてあったが、対象が若過ぎてジジイの目を惹く様なものは殆ど無かったが、代りにBGMの音が良くて物よりもその音に興味をひかれた。
音源を辿ると奥の机の両脇に置かれた、小さなスピーカーユニットが付いた「筒」から音が出ていた。
これが10年ほど前に開発されたエムズシステムの波動スピーカーである事をお解りの方も今では多かろう。
スピーカーユニットと云っても、見た目には如何にも安物と思われるちゃちな8センチ位のフルレンジ、それが直径20センチ、長さ50センチ程の紙と思しき筒に嵌めこまれた単純な造りで、失礼ながら金額的にはこの日の手持ちの金額で充分間に合うだろうという印象の代物であった。
子供の玩具のようなちゃちな筒からどうしてこういう音が出るのか、音が不思議な事に自然に体の中に吸い込まれてゆくような、美音と云うよりも心地よいと云った方が適切な、今迄余り味わった事のない音を辺りに発散していた。
こりゃひとつ買っちゃおうと思って金額を見たら12万6千円の正札。元来日本人は無形のものに金を払おうという発想が希薄である。オーディオマニアだけは例外かと思っているが、それにしても不思議な音だと云うだけで12万6千円は如何なものかと正直思ったし、これで売れるんだろうかと訝った。
普通ならこれで終わり、店を出たら忘れてしまうが、どっこいこの音後々まで尾を引いた、BL4343などは発売当初の割れ鐘の様な試聴音が今でも耳に残るが、このスピーカーは極めて好もしい、体中を包み込み沁み入るような印象で耳に残った。

このビルには二度と行こうと思わなかったが、「筒」の音はもう一度聴きたいと思い、試聴というより買いに行ったという方が正確だが、新富町の試聴室を訪ねた。
「波動」辞書によると「初めは水波などから類推された概念で、媒質中の変位が順次に連続的に且つ周期的に他の部分に伝わる現象を意味する」。
我々が通常聴いているスピーカーが発する「音波」は同じく辞書によると[空気その他の媒質が、
発音体の振動を受けて生ずる波動、これが耳に入り鼓膜に触れるときに音の感覚が生ずる]とある。晦渋は辞書だからやむを得ない。要するに池に石を放った時の波紋を思えば良いので、だから音は波動が無ければ音にならないわけで、態々「波動」と冠を載せる意味がちょっと解り難い。
メーカーのエムズシステムは解説書「エムズサウンド・バイブル」中の「エムズシステムはなぜ生まれてきたのか」の結びでこう云っている。
「波動スピーカーは作曲家、演奏家、歌い手それぞれの想いをあなたの心に直接響かせ、ある時は心を落ち着かせ、あなたが本来持っている感性を呼びさまし、磨き上げて、あなたがあなた自身であることに気付く楽器、それがエムズシステム・サウンドです」どうにもまどろっこしい。
屁理屈を云って絡む気は毛頭ないが、僕は音楽を聴くという単純な行為に面倒な理屈は考えていない、文字通り音を楽しみたいだけで、いちいち感じ入って自分とは何者ぞなどと分析するような趣味は持っていないし、第一分析したって達する結論が碌なものでないくらい解っている。
折角楽しんでいる時に改めて、鏡を見るような愚かを犯してたまるか。
それに僕自身はA君でもB君でもないから、僕が僕自身である事は云われるまでも無く知っておるので、こう持って回って押しつけられると、どこぞの宗教から折伏されているようで、体中がこそばゆくなってくる。
美音の心地よさは耳を中心に体全体に沁み渡り、僕のシステムでも心地よかったり眠くなったりしており、音楽は譬えラジカセの音でも良い音楽であれば僕の(人の)音楽的感性のみならず心を磨いてくれる。反対に楽想の稚拙な音楽には苛立ち、落ち着きを僕らは失う。
何もそれは波動スピーカーで聴いたからという事ではなく、それに、感性を磨き心を癒し磨くのは音質も多少は影響するかもしれないが、音楽そのものの持つ力のほうが遥かに大きいと、敢えて考えてみろというならそう思う。

また、バイブルにはこうも記してある「ケイタイやパソコン、ラジカセなどの人工的な電子音ばかりに囲まれているとついイライラしたり心のバランスを失いがちです」・・・デジタル音は僕も嫌いだし、長時間の視聴が人間の生理に良い影響を与える筈が無いと思っているからその点には同調するけれども、パソコンやラジカセの音だって音楽そのものは何の分け隔てもしないものだと思っている。
まあ、宣伝文句だからそうむきになる事も無いのだが、折角の興がこういうところで削がれてしまうのはちょっと勿体ない気がする。
だが、改めて聴いた音はあのビルの雑踏の中で聴いたものより遥かに素晴らしいものだった。
誰だってこれだけの音造りが出来れば自慢したくもなるのも無理は無い。
そのコンパクトさといい、小さな家に住む我々にとってはひとつの恩恵だし、彼らが自画自賛するように「音に包まれて、心が開け、率直になれる」なら、神を見るようなものだろう。
バイブルはこうも言っている「柔らかく豊かな音色でその場全体を満たし、空間自体を調和のとれたものとしてリラックスさせてくれます」これは本当だった。
序に云うならその臨場感が半端でない。嘘だと思うなら行って聴いてみると良い。
百聞は一聴に如かず、何も云わずにいてくれれば、原価がどこかで見え透く事などものともせずに、僕はこの素晴らしいスピーカーを買っただろう。
特徴的な事がもうひとつある。
これだけ音が良ければマニアが飛び付いてもよさそうなものなのに、従来の超マニアの間では一向に話題に登らず、殆ど興味を持たれた形跡が無い。何故だろうと考えてみて思い付く事があった。
試聴室に出向いたこの時「このスピーカーは音源を選ばない。ラジカセを繋いでも高級アンプを繋いでも等しくこのスピーカーの音がする。如何なるアンプを以てしても我スピーカーは不変である」・・・と云う。
マニアが横を向くとすればこの点で、音源を選ばないという事が本当なら、今迄の研究の成果と膨大な出費の全否定につながる。根本からやり直すことなどもう出来ないところに殆どのマニアがどっぷり漬かっている訳だから、今更それを捨てることなど出来るわけが無いのである。
それに、不変なものに相対しても何の達成感も得られないから面白くないのだろう。阿呆な努力をしたがるのがマニアの心理でもある。それが出来ない。
だが、「音源を選ばない」と彼らが云うのは半分本当で半分は過信であることに、この時僕は気付いていた。
市販のCDをアンプを繋ぎ換えて聴いても、成程音の変化を殆どじさせなかったが、それは繋ぎ換えたアンプのレベルが同レベルだったからで、持参したCD(新藤バージョンのSPU-A・RF297アーム・新藤バージョンのガラード301・RA1474でレコードから録音した)を聴いた時、最初の印象とは打って変わってこのスピーカーは見違えるような音で鳴ったのである。
僕の拙劣な録音は塵や傷などのプチ音が盛大に入っており酷いものだったが、今迄余り気にならなかったそのプチ音が針の様に耳を刺した、どうやら秘密はここらに有りそうな気がするのである。
ヴァイタボックスでもそうしたプチ音は細大漏らさず再生するが、余りそれが気にならない、どう云ったらよいのだろう、こうしたプチ音を包み込んでしまうようなところがあって、音楽を音楽として聴かせるための巧妙な制御装置が付いているようで、その当りは実に旨く出来ているのだが、波動スピーカーはその制御装置をベッと引っぺがしたように、音という音を全て前面に押し出して、始め聴いた時とは随分印象の違う音だった。
ヴァイタボックスとは正反対に極めてクリアーな音である。という事は音源が良ければ素直に音が向上してゆく事を意味している。このスピーカーに制御装置が付いているとしたら、ある一定レベル以下の音源に対しても見事にそれを音楽にしてしまうというところにあって、それ以上の音源に対する制御装置は付いていない。
トランペットのビラッとした開口部に頭を突っ込んだような音の生々しさには全く驚かされたが、だからどういう音源でも音は変わらないと云う彼らの過信の部分は間違いであって、音源次第でもっと凄いスピーカーに変身する可能性を秘めていると僕は思った。
このスピーカーを完璧に鳴らし切る。貴方は出来るだろうか。






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